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西村さん、櫻井さんが発見した天体を新星と確認

2005年4月4日更新

 日本時間の3月29日未明に静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんと茨城県水戸市の櫻井幸夫(さくらいゆきお)さんが、いて座の方向に増光した星をそれぞれ独立に発見しました。3月30日未明に美星天文台の101cm望遠鏡の分光器を使って、この天体のスペクトルを観測したところ、典型的な新星であることを確認しました。

 この天体のスペクトルには、水素のHα線(656.3nm)、Hβ線(486.1nm)、1階電離した鉄輝線(Fe II)に膨張する希薄な高温ガスが示す特有の輝線輪郭が認められます。この特有の輝線輪郭は「P-Cygni(ピーシグニ)輪郭」と呼ばれ、新星として増光した天体の初期段階に見られる特徴です。

 これまで暗くて見えなかった星が、突然明るく輝きだし、あたかも新しい星が現れたかのように見える星の増光現象を「新星」と呼んでいます。新星は数ヶ月から一年以上かけて次第に暗くなってゆきます。新星は白色矮星と低温度星からなる連星系で、低温度星から白色矮星に水素ガスが少しずつ降り積もり、ある臨界量を超えると降り積もった水素ガスが核爆発を起こし、星が急激に輝きだす現象です。


観測者:綾仁一哉、川端善仁
露出時間:15分

 美星天文台の101cm望遠鏡で3月30日未明に観測した新星のスペクトルです。Hα線に見られるような、線の中心の短波長側(左側)が吸収線(凹)となり、長波長側(右側)が輝線(凸)となる輪郭をP-Cygni輪郭と呼んでいます。


美星天文台の101cm望遠鏡にデジタルカメラを取り付けて撮影した新星の姿(視野は約6分角×4分角)

参考文献:
VSOLJ ニュース (139) 西村栄男さん、櫻井幸夫さん、いて座に新星を発見(下に転載)
国立天文台 アストロ・トピックス (90) 西村さん、櫻井さん、いて座に新星を発見
西村栄男さん、櫻井幸夫さん、いて座に新星を発見 アストロアーツ 天文ニュース
IAUC 8500: POSSIBLE NOVA IN SAGITTARIUS (2005 Mar. 29)
IAUC 8501: NOVA SAGITTARII 2005 (2005 Mar. 29)
IAUC 8502: V5115 SAGITTARII = NOVA SAGITTARII 2005 (2005 Mar. 30)

2日後のスペクトルの変化
上のスペクトル撮影から2日後の4月1日未明に、再び新星のスペクトルを撮影したところ、大きく変化していることが分かりました。


観測者:綾仁一哉
露出時間:20分

最初のスペクトルでは、Hα、Hβの線スペクトルが、P Cygni輪郭でしたが、今回は凸型の輝線のみが目立ち、短波長側の吸収線がほとんど無くなっています。Fe II の線スペクトルも輝線のみです。
なお、「V5115 Sgr」は、この新星に付けられた正式名称です。


VSOLJ ニュース (139)

     西村栄男さん、櫻井幸夫さん、いて座に新星を発見

著者 :山岡均(九大理)
連絡先:yamaoka@@rc.kyushu-u.ac.jp

日本天文学会では、新星・超新星・彗星といった天体を発見された方を表彰しており、咋29日には2004年度の表彰式がありました。昨年新星を発見された、静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さん、茨城県水戸市の櫻井幸夫(さくらいゆきお)さんも、表彰式に出席され、賞を受けられました。このおふた方は、表彰式の日の未明に、それぞれ新星を独立に発見され、報告されてから会場にいらっしゃっていたのです。その不断の努力には脱帽するのみです。

西村さんは、28.779日(世界時、以下同様)に撮影した写真から、また櫻井さんは28.796日に撮影したデジカメ画像から、新しい星を見いだしました。櫻井さん撮影の画像から、兵庫県洲本市の中野主一(なかのしゅいち)さんが測定された位置は、

赤経 18時16分59.04秒
赤緯 -25度56分38.8秒 (2000.0年分点)

で、いて座が持つ弓のなかにあたります。

新星は、西村さんの写真では8.7等で、櫻井さんの画像では9.1等で見えていました。明るさの違いは機材の差による部分が大きく、この間に増光しているのか減光しているのかはわかりません。櫻井さんが25日に撮影した画像では11.8等より明るい天体はこの位置になく、またチリで南天をモニターしているASAS-3システムでは、27.464日撮影の画像にも14等より明るい天体は写っていません。この2日に、たいへん急激な増光を示したことになります。

岡山県井原市の美星天文台では、29.8日にスペクトルを撮影し、この天体が典型的な新星であることがわかりました。今後のこの新星の動向が注目されます。

参考文献: IAUC 8500 (2005 Mar. 29)

2005年3月30日