さそり座は、夏の星座で1月末には夜明け前の南東の空の低く見えます。昨年の7月にさそり座の3つ並んだ星の中央、さそり座デルタ星が明るくなっていることが大きく報じられました。美星天文台では2001年1月31日未明にさそり座デルタ星のスペクトルを観測しました。
温度が1万度から3万度の恒星はB型星と分類され、その中で水素に輝線を示すものを特にBe型星(eはemission lineの意味)と呼んでいます。Be型星のスペクトルは、恒星表面(光球)の吸収線の上に輝線が重なって現れます。
さそり座デルタ星は、これまで顕著な輝線を示さないB型星だと思われてきました。しかし、2000年夏の増光をきっかけとして、分光観測がされるとスペクトルが典型的なBe型星に変化していることが分かりました。
Be型星は、普通のB型星に比べて自転速度が速く、赤道付近に電離ガスの円盤を持ちそこから水素の輝線が放射されていると考えられています。
美星天文台で観測したさそり座デルタ星の水素輝線が2つ山をしている理由は、輝線を放射しているガス円盤が回転しているために、こちらに向かってくるガスと遠ざかるガスがドップラー効果によって、2つに分かれた輝線を放射しているたためだと考えられます。