超新星1995alの発見直後のスペクトル

[SN1995al]

超新星1995alは,1995年11月1日にイタリアのペスチ氏とマッツア氏によって, こじし座の銀河NGC3021の中に発見されました.美星天文台では11月5日(日本 時間)に101cm望遠鏡に取り付けた分光器でこの超新星のスペクトルを撮影し, これがIa(いちえい)型超新星(タイプIa超新星)であることを明らかにしま した.

超新星は星が大爆発を起こし,太陽の100億倍もの明るさで輝くものです.超 新星には大きく分けて2種類あり,重さが太陽の8倍以上の星が一生の終りに 大爆発するものと,白色わい星にお伴の星(伴星)からガスが降り積もって爆発 するものがあります.Ia型超新星はこのうち後者の場合であると考えられて います.

白色わい星は重さが太陽の6倍以下の軽い星の一生の終りの姿で,普通の星の エネルギー源である核融合反応が止まってしまっているため,それが伴星を持 たない単独の星であればそのまま静かに冷えて見えなくなります.ところが, これに伴星があり,しかもそれからガスが速く降って来ると,ほとんど炭素と 酸素からなる白色わい星がだんだん太っていき,中心の圧力が上がり,しまい には中心で炭素が核反応を起こし始めます.すると,急激な温度上昇と核反応 範囲の拡大が起こり,ついには星全体が飛び散り,あとには中性子星やブラッ クホールも残らないと考えられています.これがIa型超新星の爆発のメカニ ズムです.Ia型超新星として爆発する直前の白色わい星の表面には,炭素が 反応して出来たカルシウム,ケイ素,イオウなどがあり,爆発 直後のスペクトルにはこれらの元素の吸収線が見られます.水素,ヘリウムは 爆発前に既に反応してほとんど残っていないため,水素,ヘリウムは見られま せん.これがIa型スペクトルの一つの特徴です.これに対して,重さが8倍 以上の星が一生の終りに爆発するII型超新星の場合は,表面に大量の水素が 残っているため,スペクトル中に水素がみられます.


超新星1995alのみさと天文台撮影の画像は、こちら
美星天文台ホームページへ

Kazuya Ayani, Bisei Astronomical Observatory / ayani@bao.go.jp