銀河のほとりに (37)

小暮智一 (こぐれともかず・美星天文台長)


国連のワークショップに参加して

美星スターウオッチングクラブ会報「星見だより」1996年11月号

国連には宇宙局という機関があって、宇宙環境や宇宙科学分野で先進国と発展途上国の連絡にあたっているという話は前に書いたことがあります。そのために毎年開かれているワークショップが今年(1996)は9月中旬にドイツのボンで開催され、30か国から100人近い参加者がありました。

これまでの会議がスリランカや中米といった途上国で開かれたのに対し、 今回はヨーロッパのどまんなかで開かれたため、 多くの時間が惑星探査、スペース観測からニュートリノ、重力波の検出装置など、 欧米、日本などの最先端のプロジェクトや研究報告にあてられ、 最近の動向をまとめて聞く機会にもなりました。 そして、主催者の意図もあったのでしょうが、 そうした先端的研究に途上国の人たちが参加している事例もたくさん報告されました。

先進国と途上国とを結ぶセッションでは天文学や宇宙研究が人類規模で推進されるべきことが強調され、 発展途上国がそれにどのように参加し、 また、そのための国際協力をどう進めるかが中心の話題となりました。

途上国からの発言で印象に残ったのは、 中南米地域に国際的な天文センターを構築しようというホンジュラス代表の熱っぽい訴え、 アフリカに宇宙科学の窓を開こうとするナイジェリア、エジプトなどアフリカ諸国の努力などです。

アジアではベトナム、フィリピンからの報告に続き、 スリランカからは日本との協力についてくわしい報告があり、 その中で美星天文台の国際交流活動もふれてありました。 最後のまとめで国連代表のホウボールド氏は世界各地での国際協力の現状をレビューし、 今後、先進国と途上国との絆を深めるために一層の努力が必要であるという共通認識で会議の幕を閉じたのでした。

[JPEG 12KB] 会議のひとこま


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Kazuya Ayani, Bisei Astronomical Observatory / ayani@bao.go.jp