フラウンホーフェル(1787-1826)はバイエルンでガラス職人の子供として生まれ,ミュンヘンのガラス工場で働きながら望遠鏡やプリズムの製作と研究を続けて,後にはミュンヘン大学の教授になりました. 太陽の光を分光器を通して7色の虹に分けたのは17世紀のニュートンでしたがフラウンホーフェルは,1814年に自作のプリズム分光器で太陽スペクトルに500本あまりの暗線(吸収線)を発見しました. 彼はそれぞれの暗線の波長を測定するとともに,強い線にはA,B…などの名前を付け,また,星のスペクトルにも暗線を見付けています. 太陽に暗線を発見したのは試作したプリズムをテスト中の偶然のことだったといいます. これが太陽分光の第一歩となりました.
マリエン広場に近い市立博物館では「写真術の発展」という部門の一室にフラウンホーフェルの仕事場を再現したコーナーがありました. 彼の製作した小型望遠鏡やプリズムなどが工作機械と並んで雑然とおかれ,当時のままの姿に再現されているようです. このコーナーの脇には彼のデスマスクが飾られ,若くして夭折した青年の静かな容貌がありました.
ドイツ博物館入口
一方,ドイツ博物館はイザール河の中州に建つ大きな建物です. そのコレクションも膨大で,天文部門だけを見るにも丸1日はかかりそうです. 広い展示室には19世紀の古い望遠鏡や観測機器も多数展示されています. その中でフラウンホーフェルは望遠鏡製作者として一部屋を占めており,ヨハン・G・ガレが海王星を発見したときに使ったというフラウンホーフェル製作の屈折望遠鏡が大きな場所を占めていました. 本館の屋上と別館にはプラネタリウムがあり,この博物館が天文の普及にも大きな役割を果たしている様子がうかがわれました.
海王星発見に使われたフラウンホーフェル製作の望遠鏡