我々の銀河系を含む局部銀河群は,宇宙膨張に起因しない大きな特異運動をもっている.このずれを生じさせている原因の一つとして仮定されている大重力源がグレート・アトラクターである.うみへび座〜ケンタウルス座の方向にあると考えられているが,正体はまだよくわかっていない.
銀河系の中の恒星は,銀河中心のまわりを中心からの距離に応じた速度で円運動しているだけではなく,その速度からずれた運動もしている.銀河もこれと同様,単に宇宙の一様膨張によって互いに遠ざかる運動をしているだけでなく,個々の銀河が宇宙膨張からずれた運動(特異運動)を持っている.
まず,ある時点での宇宙背景放射に対する地球の相対速度が観測から370km/sと見積もられているので,これに地球の公転運動,太陽系の銀河系内での運動,局部銀河群内での銀河系の運動を考慮すると,局所銀河群の宇宙背景放射に対する相対速度はうみへび座の方向に約600km/sとなる.さらにおとめ座銀河団を含む,近傍の銀河の距離と運動を調べると,局部銀河群の運動はおとめ座銀河団の重力の他に,うみへび座〜ケンタウルス座の方向の重力源(グレート・アトラクター)の影響も受けていると考えられた.しかし,グレート・アトラクターの方向が星間吸収の影響の大きい天の川の方向に近いため,正体はよくわかっていない.
参考文献
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池内了 観測的宇宙論 東京大学出版会
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