年中行事

日本人は1年の間に勤労の日の他に休憩慰安の日を設けていた.その内,休憩慰安の日は単に仕事を休むというのではなく,特別な感情をもって迎えた.これが年中行事の日である.

日本人は古来,生活の中に二つの心意作用を持っていた.それは「ハレ」と「ケ」である.「ハレ」は特別あらたまった気持ちをもって迎える非日常的なもので,「ケ」は日常的なものである.ハレの日というのはハレがましい気持ちで,ハレ着を着て,ハレの場に出て,ハレの膳につくという特殊な行為をする日である.これが年中行事の日である.

年中行事は季節に応じて行われたので,太陽,月,星の変化,暑さ寒さ,季節の移り変わり,動植物の移り変わりと関係が深い.年中行事という語は平安朝の宮廷から出た言葉であるが,それ以前から行われていたと思われる.

参考文献

岩井宏実,1994,民具の歳時記,河出書房新社