メキシコ,マヤの天文学 Mexican history of astronomy

西暦300年頃,メキシコ南部からガテマラにかけて発生した文明がマヤ文明で,数世紀続いた.頂点は800年頃である.マヤ文明はコデックスに描かれたマヤ文字を読み取ることによって解明され,独特な高度な暦が発達したことがわかった.

マヤの暦は260日周期と365日周期の二つの暦が組み合わされて使用された.260日は20日を一単位として13単位で構成される.365日は20日単位の18の月から成り,最後に5日が加えられた.260日と365日周期が循環する52年が聖なる数とされた.また,この360日の20倍,さらにその20倍を単位とする暦の記録があり,長期の記録にはこの単位が使用されていた.マヤでの天体観測から知られた数値を現在のものと共に紹介する.


マヤ現在の値
朔望月29.53020日29.53059日
金星の会合周期584日583.9日

この他にも日月食の記録が残っている.天文台の遺跡と考えられているものにチチェンイッツァーのカラコル遺跡がある.
では,どうしてマヤで高度な暦が発達したのであろうか.それは,マヤではかんがい技術が発達せず,天水に頼る農耕だったので,雨期と乾期のサイクルを正確につかみ,種蒔や収穫の時期を間違えないようにすることが必要であったからである.天体観測を盛んに行い,1年のサイクルを客観的に捉えようとしたからである.ただ,自然のサイクルは気まぐれだったので,神殿を多く作り,必死に神々に祈ったようである.

参考文献

S.Gorenstein,メキシコ古代文化の謎と遺産,1976,p107-120,佑学社
増田義郎,マヤ文明の謎,p113-115,読売新聞社
武田修,マヤ文明の謎,大陸書房