蜃気楼(しんきろう)

地平線付近の遠くの景色や太陽を見たとき,本来みえないはずの地平線(水平線)より下にある像が見えたり,或いは,本来の像の下にも倒立した像が見える現象.地表付近の空気がその高さに伴って一定割合で大きく温度変化する場合によく生じる.

地平線以下の見えないはずの像が見える場合(上位蜃気楼)は地表付近の温度が低く,上に行くに連れて温度が高くなる場合に生じる.温度が高いと密度は低くなる.光は密度の高い方へ屈折する.従って上位蜃気楼では物体から出た光の一部が山なりに屈折して実際よりも浮かび上がって見える.冷たい海に接して暖かい空気が存在している場合などに生じやすい.見えないはずの遠くの島や船が見える.反対に,本来の像の下に像がみえる場合(下位蜃気楼)は,地表付近の空気温度が高く上に行くに連れて温度が低くなる場合に生じる.夏のアスファルトの道路などで遠くの車を見るとタイヤの下に影のように写って蜃気楼が見える場合がそれである.

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参考文献

Robert Greenler著 小口高・渡邊堯 共訳 「太陽からの贈り物」丸善株式会社