人工衛星の寿命

人工衛星の寿命を決めるものは2つある.1つは大気や磁気帯による軌道の減衰,もう1つは姿勢制御や電波送信等に使うエネルギーの枯渇である.また強い太陽風などを受けるので,故障による不慮の死もある.

1960〜70年代には,低軌道の人工衛星の設計寿命は1年が普通であった.1980年代は3年くらいであった.現在はハッブル宇宙望遠鏡のように15年という衛星も出てきた.

かつてのスパイ衛星は,10m以上の巨体で100kmちょっとの超低軌道を回ったので大気のまさつが大きく,すぐに大気圏突入し,寿命が100日程のものもあった.科学衛星などでは,軌道を上げたり向きをかえたりするスラスターの燃料を使いきって短い寿命を終える衛星が多かった.最近はスラスターではなく,ジャイロと反動ホイールで向きを変える衛星が多く,これは燃料に左右されず比較的長寿命がのぞめる.また,赤外線天文衛星などは機器を冷却する冷媒がなくなるまでが寿命を決める.

なお静止衛星は,大気による減衰がないので,エネルギー不足あるいは機器の老化や故障から寿命が終わるものが多い.多くは数年の寿命である.

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