2002年へびつかい座新星 (Nova Ophiuchi 2002)


愛知県豊橋市の長谷田勝美(はせだかつみ)さんと,三重県鈴鹿市の中村祐二(なかむらゆうじ)さんは,へびつかい座に新星を,それぞれ独立に発見しました.いずれも1月25日早朝に撮影された写真からの発見です.

これが美星天文台で分光器を使って撮影した,へびつかい座新星のスペクトル(星の虹)です.スペクトルはほぼ真横に1本明るい筋のように写っています.この写真は白黒ですが,もともとは左が青く右が赤い,虹色になっています.右端近くでひときわ明るい部分が水素のHα輝線と呼ばれるものです.

スペクトル画像
綾仁(美星天文台)撮影.MUTOH CV-16 CCDカメラ使用.

この画像を処理してスペクトルのグラフをつくると,次のようになります.水素のHα輝線,Hβ輝線,一価イオンの鉄(Fe II),ヘリウム原子(He I),ナトリウム原子(Na I)の輝線が見えています.線幅は1999年わし座新星などより狭く,この幅が新星爆発の膨張によるドップラー効果によるものとすると,爆発速度は毎秒千キロメートルくらいです.


(注): 1ナノメートルは10オングストローム.600ナノメートルは6000オングストローム

新星は,「近接連星」と呼ばれる,非常に接近した2つの星が互いの周りを回り合っている星で起こるといわれています. 2つの星の一方が白色矮星で,もう一方の星からこの白色矮星にガスが降り積もったのが爆発的に核融合反応を起こし,白色矮星の表面が吹き飛んだものと考えられています. 爆発以前は暗すぎて見えなかった星が突然明るく輝き出すので,新しい星が生まれたように見えますが,実際は一生をほとんど終えた星(白色矮星)が一時的にぱっと輝いているものです.


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2002年1月29日
2005年3月20日改訂
綾仁一哉(美星天文台) / ayani@bao.go.jp