わし座新星 1999


岡山県津山市のアマチュア天文家,多胡昭彦(たごあきひこ)さんは,1999年7月13日にわし座を撮影したフィルムから新星を発見しました. 7月14日夜,愛媛県の久万高原天体観測館の中村さんがCCD撮影によってその存在を確認して,新星の精確な位置を測定し,さらに美星天文台では連絡を受けた研究員がスペクトルを撮影して,この天体が確かに新星であることを確認しました. 多胡さんにとっては,1994年のへびつかい座新星の発見以来,2つ目の新星発見となりました.

これが美星天文台で分光器を使って撮影した,わし座新星のスペクトル(虹)です.スペクトルはほぼ真横に1本明るい筋のように写っています.この写真は白黒ですが,もともとは左が青く,右が赤い虹色になっています.右端近くでひときわ明るい部分が水素のHα輝線と呼ばれるものです.

スペクトル画像
綾仁・川端(美星天文台)撮影.MUTOH CV-16 CCDカメラ使用.4分露出

この画像を処理してスペクトルのグラフをつくると,次のようになります.水素のHα輝線,Hβ輝線,一価イオンの鉄(FeII)の輝線が見えています.いずれも線幅が広く,この幅が新星爆発の膨張によるドップラー効果によるものとすると,爆発速度は毎秒2, 3千キロメートルに及んでいます.


(注): 1ナノメートルは10オングストローム.600ナノメートルは6000オングストローム

新星は,「近接連星」と呼ばれる,非常に接近した2つの星が互いの周りを回り合っている星で起こるといわれています. 2つの星の一方が白色矮星で,もう一方の星からこの白色矮星にガスが降り積もったのが爆発的に核融合反応を起こし,白色矮星の表面が吹き飛んだものと考えられています. 爆発以前は暗すぎて見えなかった星が突然明るく輝き出すので,新しい星が生まれたように見えますが,実際は一生をほとんど終えた星(白色矮星)が一時的にぱっと輝いているものです.


新星の画像は,アストロアーツのページの国立天文台天文ニュースまたはVSOLJニュースをご覧ください.
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1999年7月20日
綾仁一哉(美星天文台) / ayani@bao.go.jp