これが美星天文台で分光器を使って撮影した,わし座新星のスペクトル(虹)です.スペクトルはほぼ真横に1本明るい筋のように写っています.この写真は白黒ですが,もともとは左が青く,右が赤い虹色になっています.右端近くでひときわ明るい部分が水素のHα輝線と呼ばれるものです.
この画像を処理してスペクトルのグラフをつくると,次のようになります.水素のHα輝線,Hβ輝線,一価イオンの鉄(FeII)の輝線が見えています.いずれも線幅が広く,この幅が新星爆発の膨張によるドップラー効果によるものとすると,爆発速度は毎秒2, 3千キロメートルに及んでいます.
新星は,「近接連星」と呼ばれる,非常に接近した2つの星が互いの周りを回り合っている星で起こるといわれています. 2つの星の一方が白色矮星で,もう一方の星からこの白色矮星にガスが降り積もったのが爆発的に核融合反応を起こし,白色矮星の表面が吹き飛んだものと考えられています. 爆発以前は暗すぎて見えなかった星が突然明るく輝き出すので,新しい星が生まれたように見えますが,実際は一生をほとんど終えた星(白色矮星)が一時的にぱっと輝いているものです.