宇宙定数(宇宙項)

アインシュタイン方程式の中で,宇宙定数(宇宙項)は,私たちに馴染みのある普通の粒子が形成する物質密度ではないが,理論的に可能なので,理論へ導入された.現在の観測結果によれば,宇宙項は実在する可能性が十分にある.

この宇宙項は真空のエネルギーを表し,宇宙空間が膨脹しても薄まらないという特徴がある.宇宙の運動に対しては,物質が反発しあう斥力のような効果を与え,宇宙空間をより膨張させる.

アインシュタインは,宇宙は静止していると考えていた.しかし,自分が提案した一般相対性理論のアインシュタイン方程式の解は,宇宙が膨脹かまたは収縮していることを表していた.そこで彼は,物質が互いに反発しあう斥力「宇宙定数(宇宙項)」を理論に導入し,互いに引き合う重力と釣り合わせて,静止した宇宙モデルを提案した.その後,宇宙空間が膨脹していることが観測され,彼は宇宙定数を導入したことを「生涯で最大の失敗」と言ったという話は有名である.しかし現在の宇宙の観測結果を説明するために,宇宙定数は復活している.今後,観測データが蓄積されていけば,宇宙定数の値を決められるかもしれない.

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参考文献

池内了,「観測的宇宙論」,東京大学出版会