宇宙の熱史

初期宇宙では,ビッグバンの後の核融合によって,ヘリウムから順次軽い元素が作られていく.

宇宙がビッグバンによって始まったとすると,誕生直後の宇宙は,超高温で超高密度だったはずである.熱い宇宙では,電子・陽電子・陽子・中性子・ニュートリノなどの粒子が生まれたり消えたりしていた.宇宙が誕生してから1秒後の,100億K(度)の高温の頃である.

その間にも宇宙は膨張しながら冷えていき,宇宙誕生後数秒経つと,ニュートリノは自由に動き回るようになり,電子・陽電子のペアでの生成と消滅は止まる.粒子はくっついて原子核を作り始めるが,高温過ぎるのですぐに壊れては,また作られていた.核融合反応は,宇宙誕生後3分くらいまでに一気に進み,その後はゆっくりと反応が凍結していく.数分後まで壊れずに残っていた主な元素は,水素とヘリウムと重水素である.

約10万年後には,温度は約3000Kまで下がり,水素の原子核とヘリウムの原子核が,飛び回っていた電子をつかまえて原子を作った.この時以来,今までいろいろな粒子に阻止されて自由に動くことができなかった光が,邪魔物がつかまったおかげで宇宙全体を自由に走るようになった.これを「宇宙の晴れ上がり」と呼ぶ.この時の光は,その後宇宙が膨張するにつれて波長が伸び,現在は電波として観測されている.この電波は宇宙背景放射と呼ばれる.星や銀河は,その後形成されていったと考えられている.

an.gif