七夕

旧暦7月7日の星祭.五節句の1つ.様々な形で祭られてきた.起源は大きく2つある.

1.中国の宮廷行事・乞巧奠(きっこうでん)が伝来したもの.

天帝の娘の織女星(こと座のヴェガ)と牽牛星(わし座のアルタイル)の恋物語にちなんだ星祭.星をながめ,祭壇に針などをささげて工芸の上達を願う.この祭を中国の宮廷では乞巧奠という.日本の大和朝廷も乞巧奠にそって七夕を祭った.民間に広まったのは室町時代以降と言われる.

七夕の物語は,中国の伝説.類話が,東南アジア〜朝鮮半島・中国・西日本の広範囲に見られる.天にのぼった恋人たちが,最後に大河によってひきさかれ,1年に1日しか会えなくなる結末はだいたい同じである.その1日が7月7日である.

2.農村のみそぎの行事/盂蘭盆(うらんぼん:旧7月15日)の準備

日本の七夕祭りは大陸伝来の星祭だけではなく,古い民間信仰と結びついている.折口信夫によると,乞巧奠伝来以前から,日本には棚機女(たなばたつめ)という巫女が,水辺で神の降臨を待つという農村の「禊ぎ(みそぎ)」の行事があったというものだ.両者が合体したのが日本七夕で,タナバタの読みは棚機からきているという.

また,民俗学の諸調査によると,田舎の町村の七夕祭は,すぐ後の大型年中行事・う蘭盆(お盆のこと.旧7月15日前後)の準備という色彩が強い.そのためのみそぎだという説もある.柳田国男によると,江戸以前の都市部以外での七夕は,住民の9割程度が牽牛織女の伝説を知らずに行なっていたという.なお笹飾りは日本独特で,中国や東南アジアの七夕には見られない.

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