膨張宇宙モデル(宇宙の将来)

一般相対性理論のアインシュタイン方程式を解くと,宇宙の歴史と運動がわかる.この方程式の解のうち,フリードマンによって導かれた解は,宇宙の密度がどの場所でも,どの方向を向いても同じで,かつ,宇宙定数(宇宙項)が無いので,標準的な宇宙モデルとして受け入れられている.

フリードマン宇宙モデルには,宇宙定数(宇宙項)が無いので,宇宙の将来を運命づけるのは,宇宙に存在する物質の密度だけである.

(1)宇宙の物質の平均密度が,臨界値より大きい場合

宇宙は誕生してからしばらくは空間が膨張して大きくなるが,物質の間に働く引力(重力)が,宇宙膨脹の速度を遅くする効果として充分に働く.膨脹速度はどんどん遅くなっていき,やがて膨張は止まり,その後は空間が収縮して宇宙は小さくなっていく.宇宙の大きさに限りがあるので,「閉じた」フリードマン宇宙と呼ばれる.

(2)宇宙の物質の平均密度が,臨界値より小さい場合

宇宙は誕生してから空間が膨張して大きくなり,物質の間に働く引力はあまり効かないので,永久に膨張を続ける.宇宙の大きさが無限なので,「開いた」フリードマン宇宙と呼ばれる.

(3)宇宙の物質の平均密度が,ちょうど臨界値の場合

宇宙は誕生してから空間が膨張して大きくなるが,無限の時間が経つと,膨張速度が0になる.「平坦な」フリードマン宇宙と呼ばれる.(実質的には(2)の場合と変わらないが,(2)では無限の時間が経っても,膨張速度は0にならない.)

上記の(3)になる場合の宇宙の平均密度は,1m^3に水素原子がおよそ5個存在するくらいの密度だと考えられている.この値は,宇宙の現在の膨張率(つまりハッブル定数)を観測し,宇宙膨張と重力との兼ね合いだけを考えて,求めた値である.

宇宙の平均密度を精度良く観測しようと様々な試みがなされているが,宇宙を構成している主な物質の正体がいまだ不明なので,明確な結論を得ることは難しいのが現状である.

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参考文献

成相秀一&富田憲二,物理学選書19「一般相対論的宇宙論」,裳華房