ビッグバン宇宙論の困難

ビッグバン宇宙論には3つの困難があり,これを補足するインフレーション宇宙論はこれらの困難をいっきに解決できる.

困難1
あらゆる方向からやって来る光の強さ(宇宙背景放射)には,凸凹が非常に少ない.ということは,互いに光速で走っても届かないほど遠方(つまり,因果関係を持てないほど遠方)まで,物質の密度がほぼきれいにそろって分布していたことになる.何故,因果関係が無いところまで,宇宙は示し合わせたように一様な顔をしているのだろうか?

困難2
現在の宇宙の空間の曲がりぐあい(曲率)は,直接測定できないほど平坦になっている.ところが,ちょうど平坦な宇宙を再現するためには,宇宙が誕生したばかりの頃の宇宙の密度が,100桁以上の精度でピタッとうまく調節されていなければならない.しかし,宇宙が誕生してすぐには,時間や空間が大きく揺らいでいるので,初期値をピタッと合わせることは不可能なのである.

困難3
氷が水になったり,水が水蒸気になったりする変化を相転移と言う.宇宙も誕生してから数回の相転移を経て,現在の姿になったと考えられている.相が変わるたびに,どのような種類の力が働くかが変わってくるのである.しかし,現在の宇宙をよく表している標準理論では,相転移が起きるとモノポールと呼ばれる磁気単極子が大量に作られるはずだが,モノポールは見つかっていない.現実にはモノポールは存在しないか,もしくは見つけられないほど少量しか存在しないようだ. 

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