観測の詳細とスペクトル
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9日、11日、23日の夜に101cm望遠鏡の分光器(低分散、R=1000)を使って観測を行いました。
この天体の座標はR.A.=19h 21m 30.3s Dec = +61d 08' 10.8"で、発見時は15.7等級(ノーフィルター)でした。
23日の観測で得られたスペクトルが以下です。
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Hα線(656.3nm)の幅広い
輝線、Hβ線(486.1nm)と1階電離した鉄(FeII、516.9nm)の
吸収線が見られます。
超新星はスペクトル中に水素が見られないI型と、水素が見られるII型に分類されます。
SN 2012bv は水素の線(Hα、Hβ)が見られることからII型と言えます。
爆発によって膨張するガスには私たちに近づくものや遠ざかるものがあります。
そのようなガスの中で発せられたHα輝線はドップラー効果のため観測される波長が短くなったり、
長くなったりし、輝線の中心波長前後に広がります。輝線の幅を調べると、
SN 2012bvで観測されるHα輝線を放つガスの膨張速度は9000km/sと推定されます。
Hβ線では短波長側が吸収線(凹)、長波長側が輝線(凸)となった、
P-Cygni プロファイルと呼ばれる形状が見られます。この吸収線は星の表面の光を
私たちに向かって高速で膨張しているガスが吸収するために生じたものです。
吸収線が本来のHβ線の波長からどれくらい短波長側にずれているか(青方偏移しているか)を
見積もることでガスの膨張速度を調べることができます。
Hβの吸収線は7500km/sほど青方偏移しており、
超新星の母銀河である NGC6796 の後退速度(2189km/s)を考慮すると、ガスの膨張速度は約9700km/sとなります。
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