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宇宙全体を一つの方法で測ることはできない.近い天体から遠い天体へと,距離を測るためには色々な物差しがあり(距離のはかりかたのいろいろな方法),これらをつなぎあわせて,一歩ずつ距離を決めていく.このような測り方は,はしごを一段ずつ昇ることに喩えられ,「宇宙の距離はしご」と呼ばれる. (1)太陽系の月や金星は,発射したレーダー電波やレーザー光線が往復し て地球まで戻ってくる時間から,距離を測ることができる. (2)これより少しだけ遠くを測ろうとする最初の方法は,視差距離を測ることである.この方法は,現在 約1000光年まで測ることができる. (3)20世紀に入り,ヘルツスプルングとラッセルは,視差を測ることによってあらかじめ距離がわかっている星の色と明るさの間に或る関係(主系列星の光度−色関係)を発見した.この関係を利用すると,星の色を観測すれば,本当の明るさ(絶対光度)がわかる.それを見かけの明るさと比べることにより,さらに遠くの星の距離がわかるという仕組みである.この方法で,約100光年から約10万光年までの星の距離を測ることができる. (4)それまでに距離がわかった天体の中に,明るさが周期的に変わるセファイド型変光星がある.その周期と絶対光度との間には,一定の関係(セファイド法)がある.セファイド型変光星は特に明るいので,私たちの銀河系の外にあっても,その変光周期を測ることにより,他の銀河までの距離も測ることができる.この方法で,現在はハッブル宇宙望遠鏡により,約6000万光年まで(おとめ座銀河団)の距離が測られている. (5ーA)現在は,さらに遠い距離を測る方法が研究されている.渦巻き銀河の回転のスピードと明るさとの関係(タリー・フィッシャー関係)から,距離を測る方法では,数100万光年から20億光年以上(赤方偏移 z = 0.2 )までの距離を測っている. (5ーB)超新星の見かけの明るさを利用して距離を測る方法も,よく使われるようになってきている.超新星のうち,水素原子からの輝線を放射していないタイプで,白色矮星へのガスの降り積もりによって爆発したIa型のものは,爆発後,急激に暗くなっていく.セファイド型変光星を使って距離が決められていた銀河に,このタイプの超新星が出現した時,絶対光度の時間変化の様子が,Ia型超新星に普遍的なものだと仮定する.他の銀河に出現したタイプIa型超新星についても,爆発後の経過時間と見かけのあかるさの変化を観測していけば,その銀河までの距離がわかる仕組みである.この方法で,15万光年から 最近では赤方偏移z=1までの距離を測っている. (5ーC)この他にも,いろいろな測り方が研究されている. (6)これより先の遥か遠い天体までの距離は,距離に比例して光の色が赤い方へずれるハッブルの法則を利用して測っている.この方法を拡張すれば(「拡張」とは,遠方では単純な比例ではなく,もう少し複雑な関係になるという意味),原則としてほぼ宇宙の果てまでの距離を測ることができる.ただし,近い天体に対しては,誤差が大きい.現在はこの方法で,1000万光年から宇宙の果て付近までの距離を測っている. 参考文献
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