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地上で観測する場合,地球大気の気流の乱れによって,天体からの光が複雑に屈折し,その結果として天体の像が揺れたり広がったりする.この現象,あるいは,これによる星像の広がりの大きさ(角度)をシーイングと呼ぶ. 天体からの光は大気上層までは平面波で進んでくるが,大気中では温度・密度が不均一であるために屈折率も不均一となり,光の波面が屈曲する.しかもこれが時間的・空間的に変化するので,望遠鏡で見た星像は揺れたり広がったり,明るさが変わったり(シンチレーション)する. シーイングが悪いと,(1)天体の像がぼやけるために,微細構造がみえなくなる.(2)コントラストが弱くなるために暗い天体の像と空との区別がつきにくくなり,限界等級が悪くなる.(3)スリットを用いた分光観測では,スリットからはみ出す光が多くなって損をする.(4)光電測光観測ではシンチレーションによる明るさの変化を平均するために観測時間を余計に必要とする.などの問題が起こる. シーイングには観測地の周辺環境が影響する.例えば風上に高山があると,気流が乱されてシーイングが悪化する.世界的にシーイングの良いところでは星像の広がりは平均1.5秒角,良いときに0.5秒角くらいである. 光の波面の乱れを特殊な鏡で平面に戻してシーイングの改善を図る技術が波面補償光学(Adaptive Optics)である.すばる望遠鏡でも,この技術の活躍が期待されている. 参考文献
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