彗星核 cometary nucleus

彗星の本体.直径は数kmから数十km程度で,地上の望遠鏡からは見えない.

1950年のホイップルの研究によって明らかにされた彗星核の性質は,しばしば「汚れた雪玉」に例えられる.そのモデルによれば,彗星核は,水などの氷の中にダスト(塵)が取り込まれたもので,その表面は短周期彗星のように太陽の周回数が多くなるほどダストマントルが発達しており,アルベド(反射能)は低く表面は黒い.彗星核の成分は,水(H2O),一酸化炭素(CO),二酸化炭素(CO2),メタン(CH4),アンモニア(NH3)等と考えられ,とりわけ,H2Oは8割程度を占める主成分とみられ,ついでCO2が多いというのが一般的な彗星核像である.詳細は探査機によるサンプル・リターンが待たれるところであるが,彗星個々のばらつきも大きいことが分光観測から知られている.

観測されている彗星核の大きさ 探査機による実測があるハレー彗星以外は,光度から推定される直径.ヘール・ボップ彗星以外の数値は,国立天文台編「理科年表」平成9年版(丸善)106ページによる)

ハレー彗星7×7×15 km
エンケ彗星7〜1.2 km
タットル・ジャコビニ・クレサック彗星1.6〜0.2 km
ファイエ彗星10.8〜1.8 km
IRAS-荒貴-オルコック彗星7×7×16 km
関-ラインズ彗星(1962III)20.2〜3.4 km
池谷彗星(1963I)17.2〜2.8 km
フマーソン彗星112〜18.8 km
ヘール・ボップ彗星約40 km

コマに検出された分子種から推測される彗星核の組成比 H2O:CO2 約10:1 残りの微量成分としては,NH3のようにNH2やNHを生成する分子,HCN,HC3N,CH3CNなどのようにCNを生成する分子,C2H2,C2H4,CH3C2HなどのC2,C3,CHを生成する炭化水素,およびSやCSを生成するS2やCS2が考えられている.(山本(1984))による.

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参考文献

国立天文台編「理科年表・平成9年版」丸善1997年
中村士・山本哲生著「彗星−彗星科学の最前線−」恒星社厚生閣,1984年