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全天の225,300個(補遺を含めると359,083個)の恒星のハーヴァード式スペクトル分類をA.J.キャノンらが行なったカタログ. ハーヴァード大学天文台ではE.C.ピッカリングの指揮のもとに,対物プリズムによって全天の恒星のスペクトル写真撮影を行なった.撮影された乾板は,キャノンが目で検査してスペクトル型に分類した.キャノンは同時に19世紀末から発展・変遷を遂げていたハーヴァード式スペクトル分類法を,現在よく知られているO−B−A−F−G−K−M,−R−N,−Sの形に確立した.実際S型星はこのカタログ編纂の過程で追加されたのである.これはまた1860年代のA.セッキに始まり,百家争鳴の状況にあったスペクトル分類法に1次元分類として初めての世界的標準を確立したことでもある. HDカタログの本編は1918年から24年にかけてハーヴァード大学天文台から刊行された. 天の北半球では9.5等星までを含んでいるが,完全に入っているのは8等星程度,また南半球ではそれよりもそれぞれ1等づつ暗いところまで広がっていると言われている.1925−36年には46,850星を含む補遺第1部が,1949年には86,933星の補遺第2部が刊行された.後者は275枚の星図の上に手書きでHD番号とスペクトル型が記入されたものであったが,1995年になってV.V.ネステロフらロシアとドイツの共同作業で精密な位置を与えたデジタル電子版が入手できるようになった.本編は全天を覆っているが,補遺は双方とも特定の領域だけをより深く(暗い星まで)探査したものである. 現在では1次元分類は時代遅れとなっているが,2次元分類もまた温度系列としてはハーヴァード式をほとんどそのまま踏襲したものであり,HDカタログを凌駕する全天を覆う分光カタログは現れていない.現在2次元分類(MK式)でHDカタログの星を再分類する計画がミシガン大学天文台で進行しており,赤緯−90度から−12度までの南天部分がすでに公刊されている. 参考文献
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