泡構造

宇宙にひろがる銀河の空間分布を数億光年以上のスケールで眺めると,泡のような構造がみられる.銀河は泡の膜にあたる部分に分布している.細胞状構造,ボイド・フィラメント構造とも呼ばれる.

1980年代から近傍の多数の銀河の赤方偏移の観測が行われ,ハッブルの法則により赤方偏移が銀河の距離に比例するものと仮定して,宇宙空間の奥行き方向の銀河分布が求められるようになった.その結果,銀河の分布が3次元的に求められ,銀河が泡状に分布していることが発見された.泡の膜にあたる部分には銀河群銀河団が連なっていて超銀河団を形成し,その一方,泡の空間にあたる部分には銀河がほとんど存在しない空洞(ボイド)が広がっている.空洞の大きさは1億光年以上に及ぶ.従って,数億光年以下のスケールでは宇宙の一様等方の仮定(宇宙原理)は成り立たない.

この泡構造を理論的に再現することが現代宇宙論の課題のひとつとなっている.

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銀河が連なっているところと,その間の銀河が無い空間(ボイド)が,大きな泡状の構造をつくっていることを示す図.
赤経8時〜17時,赤緯26.5゜〜32.5゜の細い範囲のB等級15.5等より明るい銀河(約1100個)の後退速度を調べ,赤経と後退速度の図にプロットしたもの.
後退速度(赤方偏移)が我々からの距離に比例すると仮定すると,この図は,我々の位置を中心(図の一番下)とした薄い扇形に宇宙をスライスしたときの,見かけが明るい銀河の空間分布を表している.ハッブル定数H_0を100万パーセクあたり75km/sとすると,後退速度5000km/s,10000km/s,15000km/sは,距離2.2億光年,4.3億光年,6.5億光年に対応する.
提供:ジョン・ハクラ(ハーバード・スミソニアン天体物理センター),スミソニアン天体物理研究所
http://cfa-www.harvard.edu/~huchra/zcat/

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