ハッブル定数

1929年に,ハッブルたちは,銀河20数個の「距離」と「速度」を独立に測り,ほとんどの銀河が,地球からの距離に比例した速度で遠ざかっていることを発見した.そこでこの比例関係をハッブルの法則,この比例係数をハッブル定数と呼ぶ.この発見により,宇宙空間が膨張していることが確かめられたのである.ハッブル定数を観測から決める方法はいろいろあるが,以下に3種類を紹介する.

(1)ハッブルが使っていた方法最も古くから使われている方法

ハッブルがやったように,銀河の「距離」と「遠ざかる速度」を独立に観測し,その比例係数を求める.速度の観測は,銀河の分光(スペクトル)観測を行い,特徴的な輝線の波長が,実験室(静止系)での波長からどれだけずれているかを測ることである.

(2)重力レンズを利用する方法

一般相対性理論によって予言された通り,天体を同時に発した光でも,地球へ真っ直ぐに届いた光と,途中にある銀河の質量の影響で光の道筋が曲る重力レンズ効果を受けて届いた光とは,到着時間に差が生じる.この時間差は,光の道筋の長さの差に比例するが,天体までの距離は,ハッブルの法則を用いて計算するので,時間差を測れば,ハッブル定数を推定することができる.

(3)高温プラズマの現象を利用する方法

大きな銀河団の中心に高温のプラズマが広がっていて,プラズマの電子と宇宙背景放射の光が衝突している.この衝突が原因で,宇宙背景放射の温度が変わって見える現象を利用する.プラズマのサイズは,銀河団までの距離に,広がりの角度をかけたものだが,距離はハッブルの法則を用いて計算するので,温度の変化量などを測れば,ハッブル定数を推定できる.観測技術の進歩のおかげで可能になった方法である.

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参考文献

池内了,「観測的宇宙論」,東京大学出版会