オールトの雲 Oort cloud
参照:カイパーベルト

1950年にオランダの天文学者オールトが長周期彗星の軌道を調べて提出した,2万から10万天文単位,またはそれ以上の遠日点距離を持つ数多くの彗星が太陽系を取りまいているという仮説に基づいて存在が予測される彗星の巣のことをオールトの雲という.摂動の影響でこの中の彗星が太陽に接近する軌道を持つようになって,観測されるような彗星になるという.

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多くの長周期彗星の軌道長半径の逆数の値が40×10-6(天文単位-1)付近のせまい幅に集中していることからこの仮説が考え出された.長周期彗星の軌道傾斜角が大きく異なっていることから,オールトの雲は球殻状に太陽系を取り囲んでいると考えられている.オールトの雲には約6兆の彗星の素があり,その総質量は地球50個分くらいと推定されている.オールトの雲の彗星の素は,原始太陽系で惑星が微惑星から衝突合体して成長した時代に,原始惑星に接近しながら衝突をまぬがれた微惑星が細長い楕円軌道に乗って太陽系の外縁部まで飛ばされて形成されたらしい.このあたりでは太陽の重力も僅かなので微惑星は軌道的に不安定な状態にあり,近くを分子雲や他の恒星が通過すると,その重力を受けて星間空間に飛ばされて失われたり,太陽系の内側に落ち込んできて彗星になったりする.彗星が「太陽系の化石」と言われるのはこのためである.こうして,オールトの雲が誕生した太陽系の初期の段階から今までにその質量の80パーセント程度が失われたと考えられている.

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