族,群 family,group

共通する特徴の軌道を持つ彗星や小惑星などのグループのことを族や群などという.主要な例は以下の通りである.

木星族(Jovian family)の短周期彗星

木星軌道半径に近い遠日点距離を持つ短周期彗星は数が多い.これは,別の軌道をもった彗星が,木星に接近することによって摂動を受けた結果そのようになったものと考えられており,これを木星族と呼ぶ.他にも,遠日点距離の類似から土星族,天王星族,海王星族などと言われることもあるが,彗星の軌道傾斜角が大きいためこれら惑星の軌道からは離れており,彗星への摂動の影響は木星によるものが大きく,ほかの惑星による影響は小さい.

クロイツ群(Kreutz group)の彗星(太陽をかすめる彗星群, sungrazer)

太陽をかすめる同様の軌道要素を持つ彗星の一群のことをクロイツ族,あるいはサングレイジング・コメットなどと呼ぶ.この一群の彗星は,元々は一つの彗星だったものが,太陽の潮汐力によって彗星核が分裂して形成されたものと考えられている.

平山族(Hirayama family)の小惑星

1918年に平山清次が発見した軌道要素の安定な量が同様の値を持つ小惑星の一群.これらは,もともと一つの小惑星だったものが衝突による破壊で多数の小惑星に分かれたものと考えられている.

アテン群(Atens)・アポロ群(Apollos)・アモール群(Amors)の小惑星

地球軌道に近づく「地球近傍小惑星」の軌道による分類.これらの軌道が小惑星帯(メインベルト)のものと異なることから「特異小惑星」と呼ばれることもある.

アテン群:  軌道長半径天文単位以下,遠日点距離0.983天文単位以上のもの.

アポロ群:  軌道長半径天文単位以上,近日点距離1.017天文単位以下のもの.

アモール群:  軌道長半径天文単位以上,近日点距離1.017天文単位より大きく1.3天文単位以下のもの.

トロヤ群(Trojan group)

惑星軌道上で太陽と惑星の重力のバランスが釣り合った「ラグランジュ点(Lagrange points)」のうちの正三角形解の場所にある一群の小惑星をトロヤ群と呼ぶ.1999年3月2日時点で,木星には472,火星には2,発見されている.

ヒルダ群(Hilda group)

木星の重力による共鳴作用によって,木星の公転周期である約12年と3:2になる周期約8年の軌道の領域は安定状態であるため一群の小惑星が存在している.これをヒルダ群と呼ぶ.

チューレ群(Thule group)

木星の重力による共鳴作用によって,木星の公転周期である約12年と4:3になる周期約9年の軌道の領域は安定状態であるため一群の小惑星が存在している.これをチューレ群と呼び,その発見されている小惑星数は2である.

カークウッド・ギャップ(Kilkwood Gap)

木星の重力による共鳴作用によってできる小惑星のほとんど存在しない軌道長半径の領域のことをカークウッド・ギャップと呼ぶ.細かく見ると,小惑星帯(メインベルト)は,このカークウッド・ギャップの隙間によって区切られており,この隙間と隙間の間に存在する小惑星群には内側から順番に,ハンガリア群(Hungarias),フローラ族(Florae),フォサエ族(Phocaea),コロニス族(Koronis),エオス族(Eos),テムス族(Themis),シベレス族(Cybeles)といった名前が付けられている.

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