SAOカタログ SmithsonianAstrophysicalObservatoryCatalogue(SAO)

1966年にスミソニアン天体物理観測所(Smithsonian Astrophysical Observatory)から出版された,全天で258,997個の恒星の精密位置を含むカタログ.

1960年代に人工衛星時代が始まると,ベーカー・ナン・カメラによる光学追跡によってその軌道を決定するために,基準星として天球上に万遍なく分布して位置が詳しく分かっている多数の恒星を含むカタログが必要となって来た.光学追跡の中心となっていたスミソニアン天体物理観測所は,AGK2カタログなどいくつかの位置星表のデータを総合して,FK4の基準座標系に変換して,全天にわたって1平方度に少なくとも4個以上の恒星を含むようなカタログを編纂した.作業は電子計算機をデータ処理から製版にいたるまで最大限に利用して,7年間というこの種のカタログとしては画期的に短い年月で完成され,全4巻として出版された.カタログ中では,星は天の北極から赤緯10度ごとの帯の中で赤経順に並べられている.

位置はB1950.0分点で記載されているが,のちになってJ2000.0分点に変換されたものが電子版として利用できる.SAOカタログは入手しやすいこともあって広く利用されているようである.しかし観測データの元となったのは1930年代の写真観測星表であり,これと1900年ごろの位置とを組み合わせて固有運動を算出している.固有運動の精度のために2000年近くの位置を計算すると,誤差が大きくなる恐れがある.もっと最近のカタログ,例えばヒッパルコス衛星によるカタログやPPM(位置・固有運動)カタログを使うことが推奨される.

sn.gif

参考文献

Smithsonian Astrophysical Observatory (Haramundanis,K. et al.): 1966,Star Catalog. Positions and proper motions of 258,997 stars for the epoch and equinox of 1950.0, Publ. Smithsonian Inst. of Washington,D.C. No.4562,Washington,D.C.,USA.
日本天文学会 編,1989,新版星図星表めぐり,p.26.