望遠鏡は1608年にオランダで発明された.「外蕃通書」によると,ジョン・セーリスが1613年に家康に献上したのが日本初の伝来と言われている.その後,日本でも製作され,最初の製作者は長崎の人であると思われる.享保のころには森仁左衛門がおり,その製作した屈折望遠鏡が神戸市立博物館,神戸商船大学等に現存する.この頃,徳川吉宗も望遠鏡で天体観測を行った.望遠鏡を普及させたのは和泉の岩橋善兵衛である.1793年に京都で橘南けいをはじめ,時の知識人に太陽,月,木星,アンドロメダ銀河,ミザール等を観察している.その後,善兵衛は5代にわたり,望遠鏡を製作する.岩橋家の望遠鏡は伊能記念館,善兵衛ランド(寄託),高樹文庫,彦根城博物館(寄託),トンチん館等に現存する.19世紀に入ると製作者は増え,麻田剛立の養子である麻田立達,加賀の松田東英(神戸市立博物館,石川県立歴史博物館に現存),小林常行らが出た.一方,国内初の反射望遠鏡(グレゴリー式)は鉄砲鍛冶であった国友藤兵衛が1836年に製作した.
望遠鏡は一般に月,太陽,惑星,彗星や恒星の位置観測,日食・月食の食分の測定,星食の観測に利用された.特に,日食や月食の観測では食分を正確に測定するために,定分儀や写影鏡など付属機器をつけたり,望遠鏡自体を改良している.
伊能忠敬と当時の天文方は木星の衛星の食を2地点以上で同時観測することを試みている.同時観測は成功しなかったが,レグルスの食の同時観測に成功している.
参考文献
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渡辺敏夫,1987「近世日本天文学史(下)」p.573-599,恒星社
渡辺誠,1993「岩橋家の製作した望遠鏡について」富山市科学文化センター研究報告
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