ZTF彗星を観測しました

ZTF彗星とは

ZTF彗星(C/2022 E3)は、2022年3月にアメリカ・パロマー山天文台のZTFサーベイ計画で発見された彗星です。2023年1月から2月にかけて地球に接近し、5等星程度まで明るくなることが期待されています(非常に暗い空で見える一番暗い星が6等星で、それよりわずかに明るい程度)。

望遠鏡で撮影したZTF彗星

101cm望遠鏡で撮影したZTF彗星
小型(口径18cm)望遠鏡で撮影したZTF彗星

2023年1月20日、一般公開が終わった後の「101cm望遠鏡占用観測」の時間に、兵庫県の岡村さんによってこのZTF彗星の101cm望遠鏡による撮影が行われました。撮影では、101cm望遠鏡に冷却カラーCMOSカメラを装着し、午前3時18分から40分にわたって撮影が行われました。中心部には明るく彗星本体の核と、その周辺に「コマ」と呼ばれる彗星から噴き出したガス・ダストの様子が見えています。また、これらのガスやダストが長く伸びた「尾」も写っている様子がわかります。同時刻に、天文台職員が小型望遠鏡(口径18cm)で撮影した画像では、ダストやイオンによる尾が、淡いながらも大きく広がっている様子が捉えられました。

肉眼での見え方

ZTF彗星は、残念ながら肉眼での観測は難しい天体です。地球に最接近している時期でさえ、熟練の観測者が月のない夜に6等星まで見える非常に暗い山奥で探しても、見つけられるかどうか、といった明るさです。双眼鏡・望遠鏡を使うと、ぼんやりとコマが広がった様子が見えるのですが、尾の様子を見るのは困難です。いずれにせよ、月明かりがあると見えづらくなる、あるいは全く見えなくなってしまう明るさです。そのため、双眼鏡などで観察するのであれば、月明かりの影響がない1月下旬頃、もしくは2月中旬頃が適した時期となります。ZTF彗星は1月22日現在で、夜半過ぎに北の空、りゅう座方向に位置しています。今後は夜空を北上し、1月末にはこぐま座からきりん座付近、2月中頃にはおうし座付近で見えるようになります。

美星天文台での観察

ZTF彗星は101cm望遠鏡ではなく、大型の対空双眼鏡など低倍率の望遠鏡のほうが観測に適しています。このため、1月下旬~2月中旬頃の夜間観望会中、よく晴れた日に2階デッキで双眼鏡などによるご案内を予定しています。ただし、上記の通り暗い天体ですので、天候(雲の有無)や月明かりによって見え方は大きく変わります。また、よく晴れたとしても、写真のような見え方はせず、雲のような、白っぽいモヤが淡く、ぼんやり見える程度の見え方が期待されます。ZTF彗星を目的にご来台されるかたは、以上のことをご理解いただけますと幸いです。