馬頭星雲の撮影

冬の代表的な星座、オリオン座。その中には、肉眼ではとても見えないような暗い星雲がひしめき合っています。カメラを使って長時間露光を行うと、このような星雲が次々と浮かび上がってきます。今回は、そんなオリオン座にひしめく星雲のうち、「馬頭星雲」と呼ばれる星雲を紹介したいと思います。

宇宙を漂う星雲には、様々な種類があり、電離した水素が赤く輝く「HII領域」や、低温の分子ガスが漂う「暗黒星雲」などが有名です。馬頭星雲は、赤く輝くHII領域の前に、黒く光を吸収する暗黒星雲が並んでおり、この暗黒星雲の形が馬の頭に似ていることから、このような名前で呼ばれています。

写真はオリオン座から馬頭星雲まで、様々な焦点距離のカメラ(望遠鏡)でクローズアップしたものであり、きれいに赤く輝くHII領域の中に、シルエットのように浮かび上がる馬頭星雲の様子がわかります。

オリオン座と、馬頭星雲の位置

HII領域からの光は、非常に淡く、また赤外線に近い色なので、残念ながら人間の目ではほとんど見えません。上の写真も、カメラを使って1時間以上、シャッターを開けっぱなしにしてようやく撮れたものになります。目では見えませんが、オリオン座を見つけた際には、こんな星雲もあるのだなと思って眺めると、いつもとはまた違った見え方になるかもしれません。

口径18cm望遠鏡で撮影した馬頭星雲周辺
101cm望遠鏡で撮影した馬頭星雲

撮影情報

撮影者天文台職員
撮影日時2021/2/10
観測装置カセグレン N焦点 + STL-1001E
撮影バンドHα: 120分, G: 20分, B: 20分, 3色合成

美星天文台における夜空の明るさの計測について

夜空の明るさ測定について

井原市では、「美しい星空を守る井原市光害防止条例」を制定し、星空を守る活動を継続してきています。その中で「夜空の明るさ」の計測は、どのくらい暗い環境を維持できているかの指標として大変重要なものです。美星天文台では、以前から様々な方法で光害調査を継続してきました。この度、新たに公募観測で得られたデータを副次的に利用して、過去12年間(2008年~2020年)の美星天文台における夜空の明るさの推移を調査しました。

計測結果の概要

公募観測の撮像データ(111夜, 10,919枚の画像)から、過去12年間の夜空の明るさを調査した結果、その明るさに統計的な有意変化(C.L.=95%)は見られず、ほぼ一定の明るさを保っていることが判明しました。その典型的な明るさはV-バンド(波長)で 20.5等級/平方秒角 (AB等級)であることが判明しました。これは、美星町の夜空の明るさが”天の川が見え始める明るさ”の目安とされる19等級/平方秒角より暗い状態を保っていることを示しています。計測方法や解析の詳細や結果については、下記の報告書よりご覧になれます。

計測結果の報告書

【速報2】はやぶさ2と、そのカプセルの撮影に成功しました

2020年12月5日から6日にかけて、美星天文台101cm望遠鏡での小惑星探査機「はやぶさ2」と、分離されたカプセルの撮影に成功しました。撮影は5日の夜間公開後22時から翌2時まで実施され、「はやぶさ2」と分離されたカプセルの冷却CCDカメラによる撮像、デジタルカメラでの動画撮影に成功しました。

はやぶさ2本体

はやぶさ2の軌跡(6日 00:07 JST)
はやぶさ2の移動の様子

カプセル

分離されたカプセルの軌跡(6日01:31 JST)
カプセルの移動の様子

本観測は「おかえりはやぶさ2観測キャンペーン」(JAXAはやぶさ2プロジェクト、日本惑星協会、日本公開天文台協会)の一環として行われました。観測に必要な「はやぶさ2」の位置情報は本キャンペーンより提供を受けています。

【速報】はやぶさ2の観測に成功しました

美星天文台101cm望遠鏡で捉えられた小惑星探査機「はやぶさ2」

2020年12月4日23時頃、美星天文台101cm望遠鏡で小惑星探査機「はやぶさ2」の観測に成功しました。美星天文台では12月5日深夜にも「はやぶさ2」の観測を予定していますが、「はやぶさ2」はとても暗く、カメラで長時間露光してようやく写る程度となります。観望会中の望遠鏡を覗いての観察は予定しておりませんので、予めご了承ください。

上の画像中、白い線で示された淡い点が「はやぶさ2」となります。「はやぶさ2」の動きに合わせて画像を足し合わせていますので、周りの星が線のように伸びて表示されています。

撮影日時2020年12月4日 14:14:07 ~ 14:16:43 (UTC)
総露光時間120秒
使用機材美星天文台101cm望遠鏡 + STL-1001E(冷却CCDカメラ)
撮像フィルターClear filter
撮影条件

本観測は「おかえりはやぶさ2観測キャンペーン」(JAXAはやぶさ2プロジェクト、日本惑星協会、日本公開天文台協会)の一環として行われました。観測に必要な「はやぶさ2」の位置情報は本キャンペーンより提供を受けています。

美星発!ブレーザー天体カタログについて

美星天文台では夜間公開終了後に、天文台職員による研究観測も実施しています。ここでは普段、天文台ではどのような研究が行われているのか、その一部をご紹介したいと思います。

「ブレーザー天体」とは、中心に非常に重たいブラックホールを持ち、活動的な性質を示す銀河の中心核(活動銀河核、AGN)のうち、その中心核から「ジェット」と呼ばれる、ほぼ光速のプラズマ流が噴出している天体の総称です。ブラックホールは物質を吸い込む天体という考えが一般的ですが、中にはブレーザー天体のように物質を物凄い速さ(秒速30万km程度)まで加速して噴出する天体もあります。ブレーザー天体は、宇宙空間で観測されている起源不明の高エネルギー粒子(=超高速物質)の源ではないかと考えられている天体の一つですが、実際にブラックホール近傍でどのように物質が加速されているかは、よくわかっていません。

Image Credit: IPAC-Caltech
ブレーザー天体の想像図 (Image Credit: IPAC-Caltech)

2020年9月16日、アメリカの科学誌「The Astrophysical Journal」から一編の論文が出版されました。論文は美星天文台の職員と、スタンフォード大学、京都大学、広島大学などの研究者からなるグループの研究成果で、それは8万個以上の「ブレーザー天体」と呼ばれる種族の天体の詳細な場所や性質をまとめたカタログについての成果となっています。

近年、世界中の科学者が協力して、このブレーザー天体の正体を探る研究を行っていますが、美星天文台でもこれらの天体について観測研究を行っています。研究では、過去の観測からブレーザー天体であると考えられている天体をひとまとめにした「カタログ」と呼ばれるリストを元に、観測が行われてきました。しかし、これまで使われてきたカタログには様々な課題があり、またカタログに登録されている天体数も1万個程度でした。そこで、我々の研究グループでは、インドとアメリカの電波望遠鏡で観測された約50万個の天体から、88,211個のブレーザー天体の候補を選び、新たなカタログを作成しました。下の図は、全ブレーザー天体の天球面上での分布を示したものとなります。

カタログに含まれる88,211天体の、天球面上(銀河系座標)での分布。銀河面と南天の天体は除く( Itoh et al 2020, The Astrophysical Journal, Volume 901, Issue 1, id.3, 12 pp.)。

この新しいカタログにより、よりたくさんのブレーザー天体の観測が可能となりました。今後、美星天文台での研究観測はもちろん、世界中の望遠鏡での観測に本カタログが利用されます。今後のさらなる研究にどうぞご期待ください。

本論文は、こちらからもご確認できます。また、カタログはこちらからダウンロードできます。いずれも研究者向けの英語ページとなっております。

ネオワイズ彗星(C/2020 F3 NEOWISE)の観測

2020年7月12日早朝に、星空公園で撮影したネオワイズ彗星
美星スペースガードセンターのドームと、ネオワイズ彗星(7月17日撮影)

早朝の北東の空低く、非常に明るい彗星が見えています。2020年3月に見つかったこのネオワイズ彗星(C/2020 F3, NEOWISE)は、7月12日現在で約1等星の明るさで見えています。肉眼では見つけるのは大変かもしれませんが、双眼鏡などを使うと、その雄大な尾を観察することができます。彗星は今最も明るい時期を迎えており、この後、1週間もすると暗くなって探すのは大変になってしまいますが、興味がある方はぜひ探されてみてはいかがでしょうか?

上の写真は、 2020年7月12日早朝に井原市星空公園で美星天文台職員が撮影したネオワイズ彗星の姿です。わずか10分ほどの間でしたが、雲間からその姿を撮影することができました。

彗星の探し方

彗星はこの後、夕方の空で見えやすくなります。7月15日ごろでは日没1時間後の北西、地平線からの高度10度程度のところで約2等星の明るさで見えると予想されています。7月20日を過ぎる頃には地平線からの高度20度以上でみることができますが、明るさは3-4等星とどんどん夕焼け空の中では探すのが難しくなっていきます。日没が見えるような、なるべく北西方向の視界が広い場所(山の展望台など)で探すと、見つけやすいかもしれません。

撮影画像のデータ

撮影日時2020年7月12日 朝4時頃
撮影場所井原市星空公園
撮影機材FSQ-85 f=327mm (トリミングあり)
カメラsony α7, ISO6400, 4秒露光1枚

公募観測成果報告(2019年4月12日)

観測者氏名押木俊之
共同観測者中西真
観測日2019年4月12日
観測装置美星天文台101cm望遠鏡,
フォールデッドカセグレンN焦点 (F12),
SBIG STL-1001E
観測テーマ彗星と春の星雲のカラー写真撮影
観測天体M51, M57, M87, M101
解析ソフトステライメージ8

観測の2日前に、M87のブラックホールの直接撮像に成功したというニュースが入り、当初計画には入れてなかったが、M87も撮像した。ジェットは写すことができたが、まだ画像処理が不慣れなので、もっとうまく処理できれば、像としてよいものはできると思っている。他の星雲の撮影は予定通りにできた。

公募観測成果報告(2020年2月22日)

観測者氏名 深川 浩幸
共同観測者
観測日 2020年2月22日
観測装置 カセグレン W焦点 + sony α7S
観測テーマ
観測天体 ベテルギウス、M44, M51, M65,
M66, M95, M97, M101他
解析ソフト Photoshop、lightloom

コメント

令和2年 奇跡的に2並びの日に公募観測することができました。23時になっても曇り空で待機状態…運が無いと思っていたら23時半過ぎオリオン座が見えたのを切っ掛けに一気に好転(しかし風が強くあと少しで観測できない頃もありましたが)以外にも、シーイングも良く、切り替えて冬の銀河巡り…沢山銀河を撮影する事が出来きました。ピントが甘い等反省点も分かってきたので次回の観測に生かしたいと思います。

公募観測成果報告 (2019年11月3日)

観測者氏名深川 浩幸
共同観測者
観測日2019年11月3日
観測装置カセグレン W焦点 + sony α7S
観測テーマ
観測天体アルビレオ、シリウス、M42他
解析ソフトPhotoshop、lightloom

コメント

コメント三回目の公募観測にてやっと晴れ間を捕まえることができました。101㎝望遠鏡で撮影は手探り状態ですが、M1、M32等撮影できて嬉しかったのが今でも残っています。

公募観測報告(例):銀河・星雲の撮影会

観測者氏名天文台職員
共同観測者
観測日2019/10/30
観測装置カセグレン W焦点 + STL-1001E
観測テーマ銀河・星雲の撮影会
観測天体NGC 2403, M51
解析ソフトStella Image 7, PhotoShop CS

観測報告

NGC2403 撮像観測

23時から観測開始. B, V, R-バンドフィルターでそれぞれ60秒露出を10枚ずつ撮影.L画像用に Clear filterで 120秒露出を20枚撮影。スケアリングのずれと見られる片ボケなどが見られる。

LBN 487 撮像観測

別名アイリス星雲とも呼ばれる。25時から撮影開始。 中心星がサチュレーションしないように、B-バンドフィルターで30秒露出を120枚, V, R-バンドフィルターでそれぞれ60秒露出を30枚ずつ撮影。 観測途中で薄雲がかかり、V-bandの撮影を一時中断した。画像処理の過程では、これら雲画像を注意深く取り除き、全体のS/N向上に努めた。

感想

途中雲の通る天候であったが、概ね予定していた観測を実施できた。フラットフレームの補正方法に課題があるので、次回観測時はより高精度のフラットフレームの取得を試みたい。